孤独な居酒屋

月の半分以上を出張で過ごす日常。寂れた居酒屋を夜な夜な探す。

先日もお邪魔したところは古いビルに一軒だけ残ったお店。老人が独りでやっていた。雪の降る夜、お客さんもいない。

酒が進むと大将の身の上話が始まるのもいつものこと。若い時はモテた、結婚したけど離婚した。でも子供が孫を生んで幸せだ。

みんながみんな、自分の人生だけは特別だと信じているけど、俺から見ればみんな似たようなストーリーだ。

誰もが自分を特別だと信じて、そして誰もが孤独。雪の降る寒い夜、雨の降る暑い夜にもお客が来るのを独り静かに待ってる。

でもそのどれもが残された夜が長くない。まもなく消えていく。

消えていく前に、そんなお店があったことを俺だけは覚えておきたい。